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ぼくが小さいころ おかあさんはどこかへ行ってだれかと話をするたびに変わった
ぼくへの対応が変わった
ごはんが変わった
おかあさんはただのどしろうとだった
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おかあさんがぼくのうしろから おとうさんに向かってしゃべっている
ぼくになりすましてしゃべっている
「ぼくのおかしなんですけどー勝手に食べないでよー」とか
「おとうさんはぼくの右がわね 左がわはおかあさんの場所なの」とか
「あーそこ開けたままにしないで ぴたっと閉めてくださいよーもぉー」とか言っている
ぼくになりすましておとうさんにいろいろ言っている
おかあさんの言っていることもドンピシャだし おとうさんの反応もおもしろい
たのしい
おとうさんもおかあさんも笑ってる
みんなでたのしいんだ
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やっとおかあさんが迎えにきた
おかあさんはぼくを見て顔が変わった
ぼくがケガしていたからだ
先生がおかあさんに言った
「休み時間に転んでケガしちゃったんですけど 泣かなくてえらかったです 痛みにつよいですね」
帰り道おかあさんが「痛かったね 痛みよりこわいことがあったんだね」と言ってくれた
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ある日ぼくは夕方におふろに入った
窓からまぶしい光が目に飛びこんできた
ぼくは吸いよせられるように窓を見ていた
空の色がどんどん変わっていく
まぶしい赤いようなオレンジのような色
それから青色がまじってむらさきになってきた
どんどん青色が勝ってきた
なすのようなこいむらさき
空が変わっていく
どんどん変わる空に きもちがあるような気がした ぼくは急にこわくなって泣いた
いやだよ だめ 変わんないでよ
ぼくはおふろから飛び出して 家じゅうの窓から空を確認した
見る窓によって空はちがう色だった
同じ一面の空なのにいろんな色ときもちがうごめいているように感じた
ぼくはきょうふのどん底に落ちた
おかあさんが空模様という図鑑を買ってきた
ぼくはそんなもの見る気にならない
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おかあさんはたまに呟く
おとうさんにも お友だちにも言っている
いまのけいけんちでやりなおせたらかなしいおもいやこわいおもいをこんなにたくさんさせなくてすんだのに
と言っている
よくわからないけど ぼくはいまのおかあさんがすき
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おかあさんはぼくのことを かわいいかわいいとしょっちゅう言っている
なんだかとても心地よい
ぼくをかわいいと言っている おかあさんの顔と全体からにじみ出ている雰囲気がだいすきなんだ
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おかあさんがおじさんに叱られている
おじさんはぼくのことをいろいろ言っている
おかあさんが真面目な顔で話している
おじさんが「しょうがいをりゆうにするな」と言っている
おじさんがぼくを見た
ぼくはどうしていいかわからなかったから とっておきの笑顔を見せてあげた
「こういう態度がだめなんだ」と言っておじさんはいなくなった
おかあさんがお外で泣いている
おかあさんはぼくをぎゅっと抱きしめた
ぼくはじっとしていた
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小さいときのぼくは
ぼくの周りで起こることすべてが おかあさんが決めて起こしていることだと思った
夜になるのも
コロッケがおいしいのも おいしくない日があるのも
ブランコがたのしいのも
雨が降ってつまんないのも
こわいことが起こるのも
ぜーんぶおかあさんが決めて起こしていることだと思った
だから小さいときのぼくは おかあさんのことがすきになったりきらいになったりした
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ぼくのおかあさんは ぼくと同じものが見えて 同じように感じているときがあるみたいだ
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あのとき この場所 この坂を ぼくはたくさんのお友だちと先生 おかあさんと歩いていた
ぼくは不安でのどが渇いていた
坂のとちゅうで苦しくなって「お茶のむ」と ぼくはなんども言った
「ここではお茶は飲んじゃだめ」と言われた
ぼくは苦しくて その場で転がって泣いた
先生とお友だちは坂の上で 手拍子をしながらとても大きな声で「がんばれ!がんばれ!」と言いながらぼくを見ていた
もういやだ やめて ぼくはおかしくなりそうだった
おかあさんも先生の言いなりなの? ぼくは泣き叫んだ
そのあとぼくは両脇から抱えられて 泣きながら最後まで歩いた
着いたら先生に「がんばったーえらい もうお茶飲んでいいよ」と言われた
ぼくはもう飲む気も 笑う気も たのしいきもちもなくなっていた
あの出来事からぼくは少し大きくなった
でも この坂にさしかかると お茶が飲みたくなる
おかあさんに「お茶のむ」と言って水筒をだしてもらう
そしてここで水筒のお茶を飲みほす
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ぼくのお気に入りのおもちゃ
夢中でずっとあそんだいた
その場所に行くとそのおもちゃであそぶ
あるとき おかあさんはしんりしさんとほけんしさんに言われた
「あのままにしておくとあっちの世界にいってしまうから いつものおもちゃを今日はかくしておきました
おかあさんこれからはもっと目をあわせて ひとりの世界であそばせたままにしないで
もっとかかわっていっしょにあそんであげてください」
おかあさんはぼくとまいにちまいにち たくさんたくさんあそんだ
ぼくの ぼくだけの夢中な世界はなくなった
そうしておかあさんがぼくの夢中になった
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その日 ぼくはずっと泣き叫んでいた
なんども逃げようとしたけどつかまった
やっとおかあさんが迎えにきた
ぼくは「おかあさん」と言った
おかあさんの顔が変わった
ぼくの声がかれていたからだ
その男の先生はおかあさんに言った
「きょうはがんばらせました」
その日ぼくはおかあさんのお腹の上で寝た
その出来事は ぼくの記憶の引き出しでいきおいよく跳ねまわっている
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ぼくから見えていなければ ぼくのことは見えていないはず
だからいま おかあさんにはぼくのことは見えていないことになる
だってぼくはいま 自分で自分の目をかくしている ぼくからおかあさんは見えない
ぼくはいま こそこそつまみ食いとか 水道でお水遊びとか おかあさんにやめてと言われそうなこと
ぼくなりにちょっとまずいかなって思うことをやるつもりでいる
見えていないはずのいま こそこそっとやるつもり
なんとなくおかあさんが見ているような感じはするけど 見えていないはずだから