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ぼくが小さいころ おかあさんはどこかへ行ってだれかと話をするたびに変わった
ぼくへの対応が変わった
ごはんが変わった
おかあさんはただのどしろうとだった
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これはすきなんだよ
これはきらいなんだよ
小さいころのぼくは そうおおざっぱに解釈されて見定められることが多かった
ぼくはそんな白か黒じゃない
いろいろな色をこころの中にもっているし
ぼくの色はいろんな条件で変わるんだよ
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ぼくはいちにちのきまった予定をやり切るだけで目いっぱいなんだ
出かけた先で「せっかくだから」とか「ついでに」とか言ってどんどん予定をふやすのはやめてほしい
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ぼくはゆっくりゆっくり円を描くように ゆるやかに変化に入って軌道にのりたい
本当はいつでもどんなときでもそうしたいけど そうもいかないときはある
おかあさんと離れるときとか 部屋に入るときとかだ
変化に突入しなくちゃいけないとき ぼくはぞぞぞぞわぁ~という感じになる
自分をぎゅっとしたいきもちになる
ガラスを爪できゅいーきゅいーって引っかいているような気分
のたうち回りたいような 奥底からむず痒いような感じが湧きあがってくる
力がはいっちゃうような 脱力してしまいような居心地の悪さを感じる
脱力したらあぶないから ぼくは通常より気分をあげてその場をむかえると こわさが吹き飛ぶことがわかった
大声を出すんだ
そしたら助けがくる
最近わかったことだけど そんなことしなくても ぼくを落ち着かせてくれるのは
いつもと変わらない態度で迎え入れてくれるひとがいることだった
そして しばらくぼくのそばにいてくれると 切り替えのときのぞぞぞぞわぁ~という感じを乗りこえられる
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ぼくは自分のことを 伝えることのむずかしさと伝わらないかなしさを知っている
それにぼくにわかるように伝えることのむずかしさもあることがわかった
それはいままでにいろんなひとが ぼくにいろんなことばで言ってくれたけど
ぼくのそのあとの態度で「わかってない」と怒ってしまうひとがたくさんいたからだ
それで「ぼくはわかってないんだ」とわかった
ぼくはなかなか伝わらない子なんだとおもった
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おかあさんがぼくのうしろから おとうさんに向かってしゃべっている
ぼくになりすましてしゃべっている
「ぼくのおかしなんですけどー勝手に食べないでよー」とか
「おとうさんはぼくの右がわね 左がわはおかあさんの場所なの」とか
「あーそこ開けたままにしないで ぴたっと閉めてくださいよーもぉー」とか言っている
ぼくになりすましておとうさんにいろいろ言っている
おかあさんの言っていることもドンピシャだし おとうさんの反応もおもしろい
たのしい
おとうさんもおかあさんも笑ってる
みんなでたのしいんだ
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ぼくは退屈な時間を過ごさなくちゃいけないとき たのしいことを思い出そうとする
あれこれ思い出しているうちに 痛い記憶にぶつかってしまうことがある
いやだなと そう思った瞬間にはその痛い出来事が まざまざとよみがえってきて ぼくは大きな声で泣き叫んでしまった
痛い記憶は少ない方がいいにきまってる
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お茶碗にのこったさいごのひとくち
「あとひとくち」「食べちゃいなさい」とか「ほらさいご」とか言って ぼくに食べさせようとする
このお茶碗が空っぽになったら 変化がおこりそうなよかんがしていたんだ
ぼくはその変化がこわい
だからさいごのひとくちが食べられなかった
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ぼくは安心するために確認する
なんど聞いても安心できないから なんども確認してしまう
なんど同じこたえが返ってきても 安心できないときがある
同じこたえでも なんかちがうんだ
目とか 声とか こもっているきもちがちょっとちがってるんだ
その確認のくり返しから ぼくは安心を得られるのかさえわからない
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ぼくはこわいこと つらいことをたくさん感じてしまう
でも おとうさんおかあさん ぼくのまわりにいるひとの笑顔があれば ぼくはやわらぐ
どうか いつも笑顔でいてください
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ぼくの合図
わかっています
あなたのこと知っています
それをあなたに知らせたい
こんにちはを言うかわりに 手を振るかわりに
ぼくは大きく目を見開いて 口も大きく開けて
ぼくはそうやって合図を送っている
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やっとおかあさんが迎えにきた
おかあさんはぼくを見て顔が変わった
ぼくがケガしていたからだ
先生がおかあさんに言った
「休み時間に転んでケガしちゃったんですけど 泣かなくてえらかったです 痛みにつよいですね」
帰り道おかあさんが「痛かったね 痛みよりこわいことがあったんだね」と言ってくれた
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なんとなくやさしい感じ
なんとなくきらわれている感じ
なんとなく失礼な感じ
ぼくはなんとなく感じている
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うたがすき
ことばはリズムにのせると するっと出てくる
ぼくのきもちとか
ぼくのなんとなくいろいろが
うまくあらわされているうたがたくさんある
うたはすてき
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ある日ぼくは夕方におふろに入った
窓からまぶしい光が目に飛びこんできた
ぼくは吸いよせられるように窓を見ていた
空の色がどんどん変わっていく
まぶしい赤いようなオレンジのような色
それから青色がまじってむらさきになってきた
どんどん青色が勝ってきた
なすのようなこいむらさき
空が変わっていく
どんどん変わる空に きもちがあるような気がした ぼくは急にこわくなって泣いた
いやだよ だめ 変わんないでよ
ぼくはおふろから飛び出して 家じゅうの窓から空を確認した
見る窓によって空はちがう色だった
同じ一面の空なのにいろんな色ときもちがうごめいているように感じた
ぼくはきょうふのどん底に落ちた
おかあさんが空模様という図鑑を買ってきた
ぼくはそんなもの見る気にならない
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電車はずっと前にすすむ
帰るときに反対にすすむ
ぼくはそうだと思っていた
スイッチバック
びっくりしすぎて泣いた
次の駅で降りた
それからぼくは その場から動けなくなってしまった
前にもすすめず もどることもできず にっちもさっちもいかなかった
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いちにちのはじまりとおわり
月のはじまりとおわり
年のはじまりとおわり
年度のはじまりとおわり
はじまりとおわり
学校のはじまりとおわり
朝の会のはじまりとおわり
じゅぎょうのはじまりとおわり
トイレットペーパーのはじまりとおわり
お気に入りのDVDのはじまりとおわり
あそびのはじまりとおわり
たくさんのはじまりとおわりがある
ぼくははじまりとおわりがこわい
はじまりとおわりの真ん中にいたい
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これから何をするのか
どこへ行くのか
ぼくの楽しいことはあるのか
そういうぼくが安心して過ごすために大切なことを教えてくれない 決めていないまま ぼくを連れだして
ぼくが混乱してしまうと ため息をついたり イライラしたり 怒りだすひと
とてもとても安心できない
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すべり台の上 見通しのいい見渡せる場所
ぼくは不安から身を守るためにここにいる
そうすると「じゅんばんー」とか「早くすべってー」とか「どいてー」とか「じゃまー」ということばが
ぼくのまわりで飛びかう
ぼくはみんなとちがう目的でここにいるんだ
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ぼくはどこへ行っても安心する場所をさがす
安心できるひともさがす
見つかってきもちがやわらぐこともあれば 見つからなくてかなしいきもちも味わった
いろんなところに安心できる場所と安心できるひとがいれば ぼくの居場所がふえる
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すれ違うひとから いろんな音が聞こえる
トコトコ
ぺたんぺたん
カツコツカツコツ
ぼくは見て聞いている
おもしろい
みんないやそうな顔をしてふりかえる
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ぼくは意味の通りに受け止められないことばがいくつかある
ぼくはことばの意味を言われたその時のシチュエーションで感じてしまうんだ
感じた記憶は衝撃のつよいものが真っ先に飛び出してくる
ほめことばだったとしても つらい時に言われたことがあったら うれしいことばには感じられない
つらい記憶がぴょーんと飛び出してしまうからだ
ぼくは怒られたら笑っちゃうときがある
ぼくはえらかった がんばったって言われると泣きたくなるときがある
だからわかってもらえないことが多いんだ
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休み時間になった
すこしほっとしたけど 状況は一変した
突然追いかけたれた
ぼくはものすごい恐怖で全力で逃げた
「やめて」も言えない
止まるのもこわい
追っかけてくる子は笑っている
ぼくはその笑顔の意味もわからない
ぼくはつまずいて転んだ
それでもぼくは立ち上がって必死に逃げた
追っかけてこなくなった
ほっとした
ぼくの膝はえぐれていた 痛かったけど
その痛みよりぼくは追いかけられた恐怖の方が強かった
休み時間は予想だにしないことがおこる
休み時間はおそろしい
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ぼくにとってはだいすきなブランコの順番をじっと並ぶことや「かして」ということはとてもむずかしいことなんだ
「かして」と相手にうまく言えたことがない
強引なことは叱られる
かしてもらうための交渉がぼくは上手くできない
だからぼくはブランコがあくのを待つことにしている
ぼくの経験上 待っていれば必ずだれかゆずってくれるか ちがう遊びをはじめるか みんな帰る
ぼくは「しつこい」とか「ねばる」とか「あきらめない」とか言われる
でもそれがぼくなりの良い方法なんだ
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どんなときだって きみだけは変わらない
いつだって変わらない目でぼくを見つめてくれる
だいすきなぼくのミッフィー
お口が小さいバッテンなものすきなところ
ミッフィーのぼくを見る目はいつも優しくてあたたかい
においもおかあさんのような お日さまのような お布団のような ぼくの安心するにおいがする
ミッフィーはぼくのことを無償ですきでいてくれるんだ
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どうすれば伝わるだろう
ぼくがこの場所にいられないほど こわいとか不安に思っていること
みんな気づいてくれない
大きな声をだしても 力いっぱい泣いても わかってもらえないことが多い
「あぁまただ」といやな顔をされることもある
でもあきらめたらだめだ
ぼくはわかってもらえる方法を考えなくちゃ
じゃないとぼくはこわれてしまう
大人がぼくをその場から連れだして助けてくれる方法を考えなくちゃ
どうすれば伝わるか ぼくはもっともこうかてきな方法を考える
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トトロ
すごくドキドキする すきな物語
よる 部屋のすみをじっと見ていると マックロクロスケがいまにも出てきそう
期待と不安でドキドキしながら 部屋のすみに注目している
出てくるぞ 出てくるぞ
うわー
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ぼくはわからないこと 知りたいことがいっぱい
どうしたら教えてもらえるかな
聞き方がわからない
ぼくは考える あの手この手を使って聞く
知りたいことのこたえはわからないままのことの方が多い
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おかあさんはたまに呟く
おとうさんにも お友だちにも言っている
いまのけいけんちでやりなおせたらかなしいおもいやこわいおもいをこんなにたくさんさせなくてすんだのに
と言っている
よくわからないけど ぼくはいまのおかあさんがすき
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ぼくが作ったぼくのルール
ずぼんとくつした くつを履くときは右足から
道順
歩くラインも決まっている
駅の改札もそれぞれの駅によってどこを通るか決めている
いろいろなじじょうで やり通せないときもあるけど
がんばってやり通せば うまくいくって気がするんだ