視野
ぼくは「あーだめだ ぜんぜん見てない」ってよく言われた
ほっぺたを両手ではさまれて顔をぐいって向けられたこともある
おかあさんが「ほら ひこうき」と言って指さした 人さし指を見ちゃうようなぼくだった
見るのがこわい
見える世界をひろげることがこわい
見えてしまうことがこわい
見えてなにかを感じてしまうのがこわい
「なにがそんなにいやなのか」と言われた
無理矢理見せられるのがいやだ
わかってもらえないのがいやだ
ぼくの見ている世界はいつもまわりが黒くかげっていた
わからないが押しせまってきている感じ
いつもまわりがはっきりしてないのに いつもなにかを感じていた
ぼくはいつも近くを見ていた
石とかカードとかをひとつひとつならべているとなんだか安心だった
ぼくはおんなじようなものをおんなじように置いていく
その結果がどんなか確認するのに顔をあげて眺める
それがぼくが安心して見れる遠くだった
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