境界
ぼくは電車でお出かけしていた
ぼくのだいすきなコース
電車でぼくはおかあさんと静かに会話する
目で会話する
電車で大きな声を出したり 大はしゃぎはいけないから
ぼくは静かにおかあさんに目でうきうき気分を伝える
おかあさんも目が「そうだね」と言っている
となりに座っていたおばさんたちが話し出した
「今日このあとは」と言っている
ぼくは聞いている 聞こえてしまう
聞こえてくるお話についつい吸いこまれてしまう
おばさんたちの話しは降りる駅も巡るコースも ぼくの全然知らないコースだった
ぼくは不安になって大きな声で「だめー」と叫んでしまった
みんなびっくりした顔でぼくを見た
ぼくも ハッとした
おかあさんが「わたしたちの話じゃないんだよ」と言った
ひとの話し声は勝手にぼくの境界を飛びこえてくる
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