やった
ぼくは知っている
その日おかあさんは足の小指を思いっきり角にぶつけた
ぼくにはわかる
あれは相当に痛い
いつもみたいに走れていないし 動きにキレがない
その日の夜 おかあさんは「おくすりのもうね」と言った
どうやったって敵わないから 最近は素直に飲むことにしていたけど
おかあさんから漂う負のオーラに
ぼくのチャレンジ心に火がついた
ぼくは走って寝る部屋に行こうとした
そんなぼくのこころの動きもおかあさんはお見通しだ
だけど小指が痛くて動きが鈍いおかあさん
いまだ!
ぼくは見事におかあさんの背中を抜いて逃げた
「せ、せなかをぬかれた」とおかあさんはくやしがった
ぼくはやった! ちょっとした達成感を味わった
でもくすりを飲むことにかわりはなかった
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